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カンボジア進出のメリット・デメリットは?日系企業一覧や進出成功事例を紹介!
2025年6月20日

日本企業の海外進出先として、「カンボジア」が今注目されています。年々増えている日系企業のカンボジア進出ですが、なぜカンボジアが選ばれるのでしょうか。
今回は、日系企業のカンボジア進出支援を手掛ける「リアグローバル」がカンボジア進出のメリットとデメリットについて解説します。実際に進出している企業の成功事例や会社設立の手順についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
カンボジア進出のメリット
まず、カンボジアが進出先として選ばれる理由、つまりメリットについて解説します。カンボジア進出のメリットは「地理的要因」「若い人材」「外資に有利な法制度」の3つです。
タイとベトナムの中間地点という地理的要因
カンボジアは、インドシナ半島にある国で、隣国にはタイ・ベトナム・ラオスがあります。陸地でつながっているので、カンボジアに拠点を持つことで周辺国へのアプローチも可能になります。そのため、初の海外進出でカンボジアが選ばれることも多いです。
また、カンボジアは、南部経済回廊(ベトナム~タイをつなぐ幹線道路)の中心でもあるので、物流においても地理的優位性が高いと言えます。
すでに、タイやベトナムに拠点を持つ企業も地理的に進出しやすく、タイプラスワン・ベトナムプラスワンの国としてカンボジアが選ばれています。
若年層の豊富な労働力と安い人件費
カンボジアの人口は約1,677万人(ASEAN経済統計基礎資料)ですが、人口の70%が30歳未満と言われています。平均年齢は約25歳と東南アジアの中でも特に若い国と言えます。
企業にとってのメリットは、「人件費の安さ」と「長いスパンでの労働力の確保」です。カンボジア人の給料はタイ人やベトナム人と比べて安いため、コスト面でカンボジアが選ばれることも多いです。
特に、製造業や飲食業など人件費がかかる業種であるほど、カンボジア進出がメリットに感じられるでしょう。
カンボジア政府による積極的な外貨誘致政策
カンボジアの会社法は、他国と比べて海外進出しやすい法制度になっていると言えます。カンボジアでは、100%日本の資本で会社を作ることが可能です。国によっては、現地資本を入れないといけないところもあるので注意が必要です。
さらに、カンボジア政府が積極的な外貨誘致政策をとっていることも日系企業のカンボジア進出の後押しとなっています。フン・マネット政権の発足以来は、経済特区(税制上の優遇措置)の設置や投資環境の改善などが行われています。
カンボジア進出のデメリット
カンボジア進出にはデメリットも存在します。海外進出で失敗しないためにも、デメリットをおさえたうえで進出を検討しましょう。
マーケットの規模が小さい
マーケットの規模を人口と一人当たりのGDPでみた場合、カンボジアは他の東南アジアの国(ASEAN諸国)と比べて市場規模が小さいと言えます。
人口(万人) | 一人当たりGDP(米ドル) | |
カンボジア | 1,677 | 1,787 |
タイ | 7,170 | 6,909 |
ベトナム | 9,819 | 4,164 |
インドネシア | 27,550 | 4,788 |
フィリピン | 11,556 | 3,499 |
マレーシア | 3,394 | 11,972 |
ミャンマー | 5,418 | 1,096 |
ラオス | 753 | 2,088 |
シンガポール | 564 | 82,808 |
ブルネイ | 45 | 37,152 |
※2022年のデータを参照
参考:アジア大洋州局地域政策参事官室ーASEAN経済統計基礎資料ー
上記の表のとおり、大きな市場を狙うのであれば、タイ、フィリピン、インドネシアなどが海外進出の選択肢となります。
ただし、カンボジアの実質GDP成長率は、2022年5.1%、2023年5%と高い水準で毎年成長しているので、カンボジア進出は長期目線で検討するのがおすすめです。
現地従業員の育成コストが高い
若い従業員を採用できるメリットがある一方で、経験豊富な中途社員を採用するのは至難の技です。現地の人材紹介会社や進出支援企業を活用する手もありますが、自社で採用/育成を行う場合はコストが高くなってしまうことがあります。
カンボジア進出を検討している企業は、育成コストがかかることを念頭におき、「若い人材が継続して勤務できる」体制づくりが重要になります。
脆弱なインフラ環境による問題
カンボジア進出においてネックになる問題の1つに、物流インフラと電力インフラの悪さがあります。
カンボジアの都市部においては、生活インフラが十分に整っている一方で、農村部の生活インフラは未だに追いついていない部分も多いです。道路も農村部は整備されていない道が多く存在します。
特に、電力インフラはカンボジアの課題で、電力供給が安定しなかったり、地域によって電気料金が大きく異なったりすることがあります。国内電力の多くをタイやベトナムから輸入しているのが現状です。
カンボジア進出の際には、インフラ環境が事業に影響しないか十分にリサーチするようにしましょう。
カンボジア進出の日系企業一覧
JETRO(ジェトロ)の調査によると、2014年1月以降に進出し、2022年3月16日時点で事業を継続しているカンボジア進出日系企業数は1,290社となっています。
同調査によると、BtoC関連のサービス業が全体の47.6%を占めており、貿易業19.4%、建設・不動産業11.8%と続いています。
具体的にどのような企業がカンボジアに進出しているか知りたい人は、「カンボジア日本人商工会」の活動報告書を確認するのがおすすめです。すべての進出企業が一覧になっているわけではありませんが、2023年時点で会員数は250を超えており、多くの日系企業が参加しているコミュニティです。
参考:JETRO(ジェトロ)
参考:カンボジア日本人商工会 (JBAC)
カンボジアに進出した有名企業3選
カンボジアの進出に成功した有名企業の事例3選をご紹介します。カンボジア国内でも急成長している3社なので、おさえておきましょう。
イオンモール株式会社
イオンモール株式会社は、2014年のベトナム進出を皮切りに、ASEAN地域で着実なドミナントを形成しています。カンボジアでは、首都のプノンペンや観光地のシアヌークビルなど3拠点を展開中です。
カンボジア政府と協力して、カンボジアの物流課題解決にも取り組んでおり、2023年には、「イオンモール カンボジア ロジプラス シハヌークビルFTZロジスティクスセンター」を開業しています。
イオンモールの事例は、カンボジア政府とうまく連携した好事例と言えるでしょう。
参考:イオンモール株式会社
味の素株式会社
味の素株式会社は、2009年にカンボジア進出を果たしており、2025年現在では、味の素がカンボジア人の食生活を支える重要な調味料となっています。味の素株式会社はカンボジア以外にもアジア各国に進出していますが、法人設立後数年で黒字化を実現した国としてカンボジア法人を紹介しています。
味の素株式会社は、プノンペン経済特区に工場を持っており、有利な税制度や安い人件費が早期黒字化の1つの要因になったのではないでしょうか。
参考:味の素株式会社
豊田通商株式会社
近年のカンボジア進出の事例で有名なのは、豊田通商株式会社の進出事例です。豊田通商株式会社は、プノンペン経済特区に車両組立事業会社であるToyota Tsusho Manufacturing (Cambodia) Co., Ltd.(豊田通商マニュファクチャリング)を設立しています。
本事業は、カンボジア政府と豊田通商が締結した「自動車産業の発展に向けた協業に関するMOU」に基づく取り組みです。
豊田通商の事例もカンボジア政府とうまく連携した好事例と言えるでしょう。
参考:豊田通商株式会社
カンボジアで起業/会社設立するには?
カンボジアで現地法人を設立する場合、カンボジアにおける株式会社である有限責任会社の形態となります。英語表記だと「Co. Ltd.」です。
設立できる会社の種類には、「私的有限会社」と「公開有限会社」がありますが、おすすめは日本の100%資本で会社を設立できる「私的有限会社」です。
ここからは、カンボジアで会社を設立するための手順について解説します。
自分で手続きをする方法
カンボジアでの会社設立は「商業省における手続き」「租税総局における手続き」「労働省における手続き」が必要です。
2020年6月10日より、商業登録手続きをオンラインにて行えるプラットフォーム(新商業登録システム)がローンチされましたが、用意すべき必要書類は多岐にわたります。
詳しくはJETRO(ジェトロ)のカンボジア会社設立マニュアルにまとまっているので、参考にしてください。
支援企業に依頼する方法
海外進出の際に企業が行うべき対応は多岐に渡ります。市場調査に始まり、カンボジアの商習慣や法制度・会計制度の把握、人材の採用、現地パートナーの開拓など、挙げるとキリがありません。
そこでおすすめなのが、海外進出支援の専門家へのアウトソーシングです。特に、会社設立の手続きは法律改正によって何度も変わっており、スムーズな手続きを行うには最新の動向を確認し続ける必要があります。必要書類の多さやプロセスの複雑さで自社での手続きに挫折してしまう企業も多いので、うまく外部の専門家を活用するのがおすすめです。
よくある質問
カンボジア人の平均月収はいくらですか?
独立行政法人労働政策研究・研修機構によると、カンボジア人の2024年1月時点での最低賃金は月額204ドルとなっています。日本円で換算すると月収約2万円です。2024年度の東京都最低賃金をベースに正社員の月収を計算すると月収約18万円なので、約9倍の差があると言えるでしょう。若くて安い人件費の労働者を雇いたい企業にとってカンボジアはおすすめの国です。
参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構 最低賃金、2024年1月に月額204ドルへ
カンボジアは海外で危ないですか?
1979年代には、ポル・ポト政権によって知識人を中心に約170万人が虐殺された悲惨な歴史を持つカンボジアですが、現在の治安は比較的安定しています。
一方で、2025年3月時点の外務省の海外安全ページによると危険レベルは「レベル1:十分注意してください。」となっています。特に、プノンペンやシェムリアップなどの観光地では、日本人が被害者となる犯罪事案も発生しているので注意しましょう。
参考:外務省 海外安全ページ
タイプラスワン・ベトナムプラスワンとは?
カンボジアは、「タイプラスワン」または「ベトナムプラスワン」と言われることがあります。タイやベトナムに拠点を持つ企業が、より安い労働コストを求めて近隣国に工場を移転するビジネスモデルが「タイプラスワン」「ベトナムプラスワン」です。
カンボジアに経済特区(SEZ)が設置されてからは、その動きが加速しており、新たな海外進出先としてカンボジアが注目されています。
まとめ
今回は、カンボジア進出のメリットとデメリットやカンボジアに進出している日系企業の事例について紹介しました。
カンボジア進出は地理的要因や労働コストによるメリットが大きいので、海外進出を検討している企業にとっておすすめの国です。一方で、育成コストがかかる点やインフラ環境が脆弱な点がデメリットとしてあげられるので、慎重に検討しましょう。
カンボジア進出にお悩みの方やカンボジアでの会社設立手続きが不安な方は、リアグローバルの無料相談に問い合わせてみるのがおすすめです。「カンボジア進出で何から始めたらいいかわからない」「そもそもカンボジアに進出するかどうかで悩んでいる」など様々な疑問に対し、可能な限り対応させて頂きます。ぜひお気軽にご相談ください。